風邪をひいたと思っていたら、咳だけが長引いてなかなか治らない。
そんな時は、気管支炎の疑いがあります。
気管支炎といえば、小さな子どもの病気のようなイメージがあるかもしれません。
しかし、実は大人の患者さんも少なくないのです。
気管支とは、空気の通り道である太い気管から左右に枝分かれした細い部分です。この部分がウイルスなどに感染して炎症が発生する病気が気管支炎です。
気管支炎は急性と慢性に分けられ、原因もそれぞれ異なりますが、どちらも咳や痰が主な症状です。
急性気管支炎は、風邪などを引き起こすウイルスによる炎症が、気管から気管支にまで達することによって発症することが多いです。また、細菌感染で起こることもあります。
主な症状は、咳や痰、発熱です。最初に乾いた咳がおこり、しだいに痰をともなった湿った咳に変わります。全身の倦怠感や下痢などの症状がみられることもあります。
赤ちゃんや小さな子どもは、気管支がまだ細くて弱いため、重症化することがあります。症状が進行すると、呼吸をする時にヒューヒュー、ゼーゼーという苦しそうな音がすることがあります。
赤ちゃんや子どもが、咳がひどくて眠れなかったり、咳込んで吐いたり、息を吸うときに胸がへこむ「陥没呼吸」という状態になったら、夜間でも救急で病院を受診しましょう。
アデノウイルスやライノウイルスなど、風邪の原因となるウイルスに感染して弱った気道の粘膜に、さらにウイルスや細菌が感染して発症します。
また、防カビスプレーなどの化学物質を吸い込んだことが原因で、気管支炎を引き起こすことがあります。
防カビスプレーを使うときは、薬剤を吸い込むのを防ぐためにマスクを着け、きちんと換気をしましょう。
主に咳や痰といった症状から診断します。痰が黄色や緑色の場合は、細菌に感染している可能性があります。
似たような病気と区別するため、血液検査や胸部エックス線(レントゲン)などの画像検査を行うこともあります。
もともと何らかのアレルギー素因があったり、別の肺疾患を合併していないかどうかを確かめるために必要な検査です。
ウイルスが原因の場合、病気そのものを治す薬はないので、咳を抑える薬を服用したり、気管支を拡げる薬を吸入するなどの対症療法が一般的です。
インフルエンザウイルスが原因の場合には、発症から48時間以内に抗インフルエンザウイルス薬が使用されることがあります。
(「インフルエンザ」についての詳しい解説を読む >>)
細菌が原因の場合は、感染している細菌に合わせた抗菌薬による治療を行います。呼吸困難が非常に強い場合には、入院して治療することもあります。
急性気管支炎は、適切な治療をすれば比較的軽く済むことが多いのですが、発熱や咳などの症状が長引く場合には、肺炎や肺結核、胸膜炎を合併していることがあるので注意が必要です。
原因不明の咳や痰が1年のうち3か月以上続き、なおかつそれが2年以上続いている場合、慢性気管支炎を疑うことがあります。
咳や痰が数か月にわたって続きます。粘り気のある痰が出るのが特徴で、黄色や緑色の痰が出ることもあります。特に冬は、症状が強くなることが多いです。
主な原因はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)です。COPDとは、タバコの煙などの有害物質を長期間吸い込むことによって気管支に炎症が起こり、空気が通りにくくなった病気のことです。
参考:厚生労働省 慢性閉塞性肺疾患 / COPD
COPDの原因のほとんどは長期間の喫煙ですが、ウイルスや細菌、一酸化炭素や硫化物などの大気汚染物質から影響を受けた可能性もあります。
また、成長期に極端に栄養状態が悪かった人は、COPDになりやすいともいわれています。
(「COPD」についての詳しい解説を読む >>)
慢性気管支炎の治療を行う際には、気管支拡張症や肺結核のような別の病気ではないことを確認するため、徹底的に精査します。
胸部エックス線(レントゲン)やCTスキャンによる画像検査のほか、肺機能検査、呼吸機能検査、肺を通過した動脈血の酸素や二酸化炭素の量を調べる動脈血ガス分析などを行い、それでも原因がみつからない場合に、慢性気管支炎と診断します。
気道に溜まった痰を出しやすくする去痰薬を服用したり、超音波の力で薬を細かい霧状にして放出する「ネブライザー」という機器を使用して、痰が出るように促す治療を行います。息切れがする場合には、気管支拡張薬などが使用されます。
慢性的に呼吸不全がみられる場合は、自宅で高い濃度の酸素を吸入する「在宅酸素療法」を長期にわたって行うこともあります。同時に筋力をつけたり、呼吸困難を改善するためのリハビリテーションを行ったりします。
急性気管支炎は、健康な大人の場合は軽症で済むことが多いです。発熱などの症状が長引く場合は肺炎の疑いがあるので、医師に相談しましょう。
急性気管支炎がひどくなって慢性気管支炎になるということはまずありません。十分に水分を補給して、安静に過ごしましょう。加湿器などで部屋の乾燥を防ぐと、少し呼吸がラクになります。
もしも喫煙者が慢性気管支炎と診断されたら、何よりもまずは禁煙です。
親に喫煙の習慣があると、子どもも気管支炎になりやすいので、お子さんやお孫さんと暮らしている方は、すすんで禁煙してください。
禁煙したい気持ちはあるけれど一人で禁煙するのが難しいという方は、禁煙外来を受診してみることをおすすめします。
横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック 理事長
医学博士 三島 渉
横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニックでは、地域密着の姿勢を保ちながら専門性の高く信頼できる医療をモットーに、私の専門分野である呼吸器内科の診療を中心として、内科・小児科の診療を、スタッフ一同全力で行っています。
急な状態悪化がよくある呼吸器疾患に対応するために、土日も診療を行っています。皆様の健康の窓口として、どんなことでもお気軽にご相談ください。